昔話フランクフルト

遠い昔の話。ミュンヘンから、友人がこれからの欧州を引っ張って行く、ユーロの総本山、欧州銀行を見たいと言うなんとも野心的な、または、マニアック的な要望から、僕たちは、フランクフルトへ向かった。しかし、今考えて見ると、フランクフルトは、何も見るべき物が揃って居ないと言うが、其の通りであり。ゲーテの生家しかない。しかし、それでも、私達は、2〜3回はこの都市に訪れている。そう、ここには、大きな国際空港があるからだ。中央駅を降立つと、大都市独特の危険な臭いがした。暫くして、路地裏を歩いていると、至る所に使い古され注射器や、薬のボトルが散乱していた。当時、ベルリンの壁が崩壊して大量に流れ込んだ、東側からの労働力。それにより、ドイツの大都市の治安の悪化が問題視され始めていた時代。私達は、どう考えても、使い終わっているテレホンカードを、原価で売りに来る無謀な族に遭遇しながら、駅前の2重ロックで雁字搦めにされた、薄暗いホテルへと、紹介されるがままに向かい、部屋に入り落ち着こうと、TVをつけると、今の明るさが全く嘘のような、薄暗いブンデスリーガの放送が流れていた。僕たちは思った、何でフランクフルトに来たのか?其の前は、ミュンヘンで、酒を交わし、其の前は、インターラーケンYHの玩具みたいなダンスフロアーで、夜な夜な、ニューオーダーブルーマンデーに、酔いしれたではないか?そう思いながら、次の朝、ICEに乗り込んで、一路、パリに向かったのであった。